秋の夜、身も凍る体験
今週のお題「表彰状」
学生の頃は特にスポーツ、勉強共に目立った所もなく、表彰の対象にはほど遠い存在。
普通に高校を卒業して大学へも進学ぜず普通に就職。そんな普通の人生の中でこの出来事は起こった。
今から10年位前の10月(たぶん)、秋の夜だった。当時は海釣りにハマっていて友達4人と夜釣りへと出掛けた。
海は台風が通過した後で、大きくうねる波。
少しでも波の影響が無い所を探し、湾内の一番奥の方へ陣取った。
そんな波の状態だった為か、他の釣り人は一人も居なく、自分たちの4人だけ。でも気にすることなく、竿を振り込んでいた。
しかし、竿先は一向に反応せず時間ばかりが過ぎる?しかも10月の寒い夜。身体の芯から冷やされる。
我慢出来なくなり『車の中で待とう』と言うことで、4人で車に乗り込む。
しばらくすると、助手席にいた友達が「何か言ったか?」と。否定する他の3人。その後すぐに、後ろに座った奴が「何か聞こえない?」。
お、アタリか?
車を飛び出し、外に出ると私にもハッキリ聞こえました。
「たすけて~~」。
…え!?
人の声。海の方から聞こえる。
急いで懐中電灯を取り、声のする方を照らすと。
!?、人だ!。女性だ!しかも2人!
そこには20歳前後の女性2人が浮いていた。
びっくりしたが、1人は急いで119番に通報。
他の3人は何か掴まる物が無いかと必死に探した。しかし何も見つからず、着ていた上着を脱いで袖を結んでロープのように作り、まずは1つを海に入れて掴まらせた。その後もう一つ。
上着のロープに掴まり、少し落ち着きを取り戻した所で、「何故、こんな日に海の中に居たのか聞いた」。1人の女性は「車のアクセスとブレーキを踏み間違えて車ごと落ちた」と。
そうこうしている内に女性達は、「寒い」と連呼し始める。多分、気温は一桁だったと思う。上着を脱いでロープにしていた為、こっちも物凄く寒かった。
女性1人が寒さの限界に耐えきれなくて、ロープ伝いに登って来ようとした。が、体力が持たなく、手を離してしまい「ドボーン」と海の中に。
しばらく浮いてこない。ダメか?と諦めかけたときにやっと浮いてきた。着ている服も水に濡れてかなり重そうだった。
そしてやっとレスキューと救急車、パトカーの順で到着。はしごを出して2人とも無事に救助。
その後、私達は現場で警察の事情聴取を受けた。住所や氏名、年齢、職業など、事細かに聞かれた。
表彰の為だろうと、少し浮かれていた。
辺りはうっすらと明るくなり始めていて、朝が近かったようだ。しばらくすると警察の?ダイバーらしき人達が海に潜り沈んだ車を探していた。
女性2人も病院で「車で落ちた」と説明した事を警察が教えてくれた。
事情聴取も終わり、そのまま病院へ行ってみる事に。やっぱり心配だったし、これも何かの縁かもしれないと。
病院の看護師に尋ねると、「もう帰った」との事。
少しガッカリして帰路についた。
怖いのはその後。
あれから警察からの表彰や感謝状、本人達からの感謝も。一切何も無い。